ヨーロッパのクリエイティブ・シティにおける創造的産業の振興施策調査

REPORT-05:「スペイン バルセロナ市の事例」

1.序論

創造都市とは,1990年代中盤からチャールズ・ランドリーやリチャード・フロリダによって提唱されてきた都市再生に関する新しい概念である。産業構造の変化や人口減少など現代都市が持つ諸問題を克服し再生を図るためには,芸術や文化といった創造性を涵養し,創造性に基づく産業の発展が必要であるという理論に基づき,このような産業により発展している都市が,創造都市と呼ばれている。また,ユネスコにおいては,芸術文化に関する世界水準での経験知識や専門知識を有する都市のネットワークとして,「クリエイティブ・シティーズ・ネットワーク」が2004年に設立されるなど,世界的に注目されている都市概念である。
創造都市の代表的な例としては,ボローニャ(イタリア),ナント(フランス),ビルバオ(スペイン)などが挙げられる。いずれも,音楽や美術といった芸術文化において注目されている都市だが,バルセロナも創造都市として再生を果たした都市として注目を浴びている。
バルセロナは,ガウディやピカソ,ミロといった多彩な芸術家を輩出した芸術都市という印象があるが,歴史的には,フランコ独裁体制による国際的な孤立が1975年まで続き,1979年にカタルーニャ州の自治権が承認されたことによって現代的な民主化がなされた地域である。この30年余りの短い民主化後の歴史の中で,オリンピック開催などを通じ,急激に発展を遂げた都市といっても過言ではない。
本稿は,ヨーロッパのクリエイティブ・シティにおける創造産業振興調査として,このバルセロナを調査した記録である。本市の経済発展やクリエイティブ・シティを目指す上での,ひとつの参考となれば幸いである。

2.調査地概要

スペイン北東部カタルーニャ自治州の州都であるバルセロナ市は,西側にティビダボ山のあるコイセローラ丘陵,東側は地中海,北端にベソス川,南端にジョブレガット川が流れ,山,川,海によって画された100.4平方キロメートルの市域内に,約160万人(2007年)の人口を有する,スペイン国内では首都マドリッドに次ぐ大都市である。
地中海性気候の穏やかな気候に恵まれたこの地には,毎年,世界遺産をはじめとする様々な芸術を堪能する多くの観光客が訪れる。また,ガウディやモデルニズモ建築を研究する学生も多く訪れている…

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(2008.10.30 仙台市経済局産業振興課産業振興係主事 遠藤陽子)