「Sendai to the World」

若干20歳にして世界最高峰のDJバトル "DMC DJ CHAMPIONSHIPS 2002" において、全DMC史上最高得点をマークし、アジア人初の世界チャンピオンに輝いたdj KENTARO氏。まさに「仙台から世界へ」を体現した存在として、自らのルーツから世界を、世界の舞台から仙台をという複眼的な視点と、ターンテーブリズムへの情熱、そして音楽に壁は無いという信念について話を聞いた。インタビュー当日は「SENDAI COLLECTION」でのライブもあり、その圧倒的なクオリティは仙台市の中心街に集まった人々を魅了していた。

仙台から世界、世界から仙台を見つめる

柿崎:仙台で生まれ育って、今は世界を舞台に活躍していらっしゃるわけですが、仙台にいた頃と、今外側から仙台を見られるようになってからは仙台のイメージはどう変わりましたか。

KENTARO:仙台は東北最大の都市でもありますし、僕がずっと育った街なんですけど、最近、本当に街そのものがどんどん変わっていますよね。例えば東口のイメージが変わったり、駅前がすごく盛り上がっていたり、今日の「SENDAI COLLECTION」のように一番町でもイベントをやったり。東京などでよく言われるのが「仙台って、クリエイティブな街だよね」とか「アーティストも多いし、面白い街だよね」ということです。僕からすれば、そういう声を聞いて仙台を客観的に見られたというか、「そうなんだ、そういう街なんだ」と。いい印象を持っている人が多いですよ。だから、仙台に帰ってくると逆に新しい発見ができるというか。僕も面白い街だなとつくづく思います。

柿崎:KENTAROさんがDJを目指そうとしていた当時と、今では、仙台の音楽シーンも変わりましたか。

KENTARO:そうですね。僕が中学の時から一緒にやったりお世話になっているGAGLEというラップチームがありますが、彼らも仙台で活躍しながら世界的にも認められていますし。僕らの合言葉で「Sendai to the World」というのがあるんですけど、仙台から世界へということが可能な街になってきたなと本当に思いますね。

柿崎:「Sendai to the World」というのはいいですね。まさに、FesLabで想定しているフェスのコンセプトと一緒です。仙台から世界への発信は可能ですし、日本の地方と世界の地方がクリエイティブな面でも直につながれるというか。

KENTARO:本当にそうですね。それができるというか、肌で感じられるようになっていますし、そういうアーティストもいっぱい出てきたり、音楽以外の芸術でも多分そういうのはあると思いますし、文化全体が世界へ発信していけるだけのポテンシャルを秘めた街が仙台なのかもしれません。

柿崎:仙台以外の場所でプレイする時に、仙台出身であることを含め、自分のルーツを意識したりすることはありますか。

KENTARO:意外に海外の人たちが、仙台って街を知ってるんですよ。びっくりしますけど。「お前どっから来たんだ?」と聞かれて「今住んでいるのは東京だけど、ふるさとは仙台だ」と言うと、「おお仙台か。東京より北の方だろ?」と返されたりして(笑)。みなさんが思っているよりも知られているのでは。世界地図にもSendaiって出てますし。僕はイギリスへよく行くんですけど、北の方にニューキャッスルという街があって、そこがすごく仙台に似た街なんですよ。気候の面もそうなんですけど、人柄も。酒もよく飲みますし(笑)。そういう共通点がある、仙台に似たような街を海外で見つけたりします。

柿崎:先ほど、お兄さんから聞いたんですけど、最近、母校の高森中学校を訪問したとのことですが。

KENTARO:PTAから連絡が来まして。給食も食べられるということだったので、ぜひぜひということで(笑)。しかも校長室で食べれるという。その日が始業式だったんですけど、生徒と全く同じメニューで。さんまととん汁とか食べて。すごくおいしかったです。

柿崎:地元からのオファーであれば、スケジュール次第でなるべく出演したいという気持ちがあるということでしょうか。

KENTARO:そうですね。できるだけ出たいですね。今回の高森中学校の時も、終わった後、理科室とか色々な部屋を回らせてもらって、すごく懐かしい思いと同時にパワーを持ち帰らせてもらったので。そういう意味でとても価値があるというか。やっぱり、自分が日本人だというアイデンティティを持つとともに、仙台人だというのがありますから。

柿崎:実際、中学校の生徒の前で講演したり、演奏した時に、生徒の反応はどうでしたか。

KENTARO:プレイしている時は「わーっ」という感じで見てて、終わった後拍手ももらって。最初は講演なんかも早く終わるだろうなというのがあったんですけど、質問コーナーというのがあって、結構みんな手を挙げてくれて、色々な質問が出ましたね。「彼女いますか?」という単刀直入な質問から(笑)、「レコードの寿命はどれくらいですか?」という面白い質問まで。体育館でみんなのいる前なので恥ずかしいだろうに。そういう意味では手応えがあったというか。終わった後も、ワーッと男子生徒が走ってきて「ネクタイにサインして」と。一人のネクタイの裏にサインしてあげたら、「俺も、俺も」となって、そしたら、女の子が「蝶ネクタイの裏に書いて!」ってなって(笑)。そういう感じでふれあえたし、楽しかったですね。

柿崎:恐らく、KENTAROさんの気持ちが生徒にも伝わったのでしょうね。だから、そういうふれあいもできたのでしょうね。このような生徒とのふれあいもそうなんですが、DJをしている時にお客さんの反応への対応というかコミュニケーションも大切ですよね。

KENTARO:やはり僕が家でやっているのではなくて、ライブでやっているので、お客さんと向き合っているという意味で、お客さんの反応を見てますね。海外だと、お客さんが僕らの方を見ないでフロアの真ん中を向いて踊ってたりするんです。それで「いい曲かけてくれよ。俺のために!」という感じで言ってくるんです。みんな自分が楽しむという考えで来てますから、お客さんの様子を見てやらなければならないということはあります。