アイデンティティの表現としてのターンテーブル

柿崎:ターンテーブリズムについて、世界的にはどれくらい認知されているのでしょうか。

KENTARODMCというターンテーブリズムの一番大きい大会は、世界中30カ国のチャンピオンがロンドンに集まって、世界チャンピオンを決めるわけです。最近は日本がほぼ上位を占めるようになってきています。ターンテーブルというもの自体は、Technics(パナソニック株式会社)のものなんですね。本来であれば日本のものなのに、今までは欧米にチャンピオンを獲られていたんですけど、ここ5年から10年くらいの間に、日本人も上位に食い込んで、僕もチャンプを獲れて、その後にも、若い人たちが3位、2位を獲ったりしています。あとはフランスとドイツも強い。フランス、ドイツ、日本、この3カ国が毎年争っている感じなんですよ。意外にアメリカとイギリスが停滞していますね。国柄が出るのが面白いです。フランス人は日本人っぽかったり、マニアックだったり、ドイツ人は固い感じだったり、本当に音にそのまま国柄が出ているんですよ。アイデンティティがターンテーブリズムには出るんです。ここしばらくフランスがチャンピオンを獲っていますが、彼らはすごくクリエイティブで。やはり芸術の国なんですかね。そこに日本とドイツが追いつけ追い越せで迫っている状況ですね。

柿崎:ターンテーブルでアイデンティティが表現されているというのは面白いですね。では、そもそも数ある楽器の中で、ターンテーブルを選んだというのはなぜですか。

KENTARO:最初、ギターやピアノも触ったことがあったんですけど、のめりこむところまでいかなかったんですよね。ある時、ヒップホップというリズムが主体の音楽とスクラッチと言われる、ノイジーな音が一緒になった音がすごくカッコよく思えて。リズム感と小気味いいスクラッチの音と。それから、ターンテーブル上の円盤がそれこそ宇宙みたいな感じで、その黒い円盤の操作がカッコよかったんでしょうね。とにかく魅力的でハマってしまいましたね。

柿崎:そうしてターンテーブルを購入して、世界チャンピオンへの道を歩み始めて、実際達成した時の気持ちはどんなものでしたか。

KENTARO:DMCの世界大会のファイナルが終わってチャンピオンが決まると、ステージの真ん中でチャンピオンジャケットを着せてもらうんです。そしてゴールドのターンテーブルがもらえる。そのシーンを僕は中学生から毎年ビデオで見ていたんです。それが、今まさに自分がその場所に立って、チャンピオンジャケット着せられているんだと思った時、はじめて実感がわいたというか、すごくうれしかったですね。そしてその年のビデオが出ると、僕がそこに映っているんですよ(笑)。

柿崎:じゃあゴールドのターンテーブルももらって(笑)。

KENTARO:はい。今自宅にあります。実際使ってますよ。

柿崎:場所や地域によってお客さんの反応は違うものなのでしょうか。

KENTARO:ヨーロッパだとすごく踊り狂う街があったりとか。日本も最近は海外と同じというか、一昔前のおとなしい感じじゃなくて、みんな騒いだりしてパワフルなんですけど。ジャマイカ行った時なんかは、レゲエ以外の音楽はポカーンという感じで(笑)。レゲエかけるとすごい盛り上がって。やっぱりカルチャーなんだなと。スーパーでも飛行機でもどこでもかかってましたからね。そういう違いはありますね。