大滝:東北大学の大滝です。岡田さん、情熱のこもったプレゼンテーション本当にありがとうございました。実は私は、今日お話しされたような分野の専門家でもないですし、仙台にそのような広い意味でのクリエイティブ・インダストリーや、クリエイティブ関連企業があるのかどうなのか実は把握していないのです。
ただ、今日お話を伺っていてとても色々な意味で刺激を受けたということで、まずそのことについて岡田さんに感謝したいと思っています。ありがとうございました。
皆さんほとんどの方が仙台に住んでいらっしゃるので、仙台の状況ということについて敢えて私の方からお話しする必要もないのかもしれないのですけれども、今日の岡田さんの一番最初の重要なメッセージは「もっと仙台を風通しのいい、特に若い才能のある人たちが、縦横に活躍できるような街にしていこうという」という、そういうことなんじゃないかという風に思ったんですね。それは私も前から考えていることで、それを特にこのようなクリエイティブ産業のような分野で、計っていこうというのがおそらく仙台市の考えている、クリエイティブ・クラスターの大きな狙いなのではないかと思っています。
先ほど、岡田さんから「都市の新陳代謝」という話があって、仙台もそういう意味で言うとすごく新陳代謝のある街じゃないかと私は思っているんですね。大体今年間5万人くらいの人たちが入れ替わっていると言われています。どうしてそんなに人が入れ替わっているかというと、それはもう皆さんおわかりのとおり、一つは、仙台という街自体が支店経済の街であって、2~3年くらいでかなりの人がダイナミックに異動していってしまうということがあります。この事を仙台に住んでいる人々はかなり批判的に見て、「だから支店経済の街なんだ」と皆さん言うんですけど、私はそのことについては、もっと肯定的に見ていて、むしろ人がそうやってダイナミックに動いていたり、県外から来た人たちが仙台を注目してくれていたり、一度仙台から離れた人が県外で仙台を応援してくれているという、実はそういう事がすごく大事なのではないかと思っている人間の一人なんですね。
ですから、毎年5万人くらいの人たちが出たり入ったりしているというのは、実は仙台にとってとても良い条件になっているのではないかということですね。それから、これは今行った話と少し近いかもしれないですが、学生の数が非常に多い。高等教育を受けている人が、おそらく市の人口の8~9%は大学、あるいは大学に匹敵するような専門学校等々に通っていると思われます。ざっと言って数千人、一万人近い人たちがその中で出たり入ったりしているということもあると思うんですね。こちらもとても大事なことで、その多くの人たちは東北地方から、また全国から集まって来ています。また、東北大学には約1千人の留学生がいますから、その1千人くらいの留学生も含めると世界中から人が集まっているとも言えますね。それだけの若い学生が来ているので、よく昔から学生の街だと言われているんですね。いわゆる「学都」です。
これも我々にとってすごく大きな、ダイナミックなインパクトを与えているのではないかと思います。しかし残念なことに、その多くの学生が仙台にとどまってくれているかというとそうではない、という現状があります。例えば東北大学では、地元に残る理工系の学生は5%くらいだと言われています。文系を入れても10数%残ればいいという感じで、あとは出ていってしまう。専門学校の学生も入れるともう少し定着率が上がってくるかもしれませんが、そういう面から言うと、せっかく仙台で何年間か教育を受けたけれども、その多くの人たちは実は最終的には外にどんどん出て行ってしまうということがあります。
これをどうしたら良いのかというのは積年の課題でありますけれども、そういう面からみても今日のお話のようなことはやっぱりインパクトを持っているなと私は思っております。ですからやっぱり、特に若い世代の人たちや、新陳代謝をもっとうまく活用したようなクリエイティブ・クラスターというなものを、どうやって作っていったらいいかという、そういうダイナミックな視点がとても重要だということを、今日、岡田さんの話を聞いて改めて感じました。
それから、今日はウィーンやリンツ、ロンドンなどの話をしていただいたんですけれども、ヨーロッパの比較的文化的な歴史がある都市に、濃密なところでこんなもダイナミックな変化が起こっているということも私はあまり知らなくて、むしろウィーンなんてどちらかというと過去の文化に随分依存している部分が多いと思っていたのですが、どうもそうではなくて、ダイナミックな動きを、ヨーロッパの中心で起こしているということも非常に刺激的だと思いました。それが一つです。
学生に聞くと、仙台いい街だなってみんな言うんですね。これは東北から来た学生に限らず、東京から来ている学生も関西から来ている学生も、場合によっては九州や沖縄から来ている人も、「4年間仙台に住んで良かった」とみんな言うんですよ。OB会やOG会で会ってみると、良かったって言ってくれるわけです。問題は、やはり人も動くし若い世代の人たちがかなり多くの人口を占めていて、ここで教育もしているという仙台の現状で、就学期間が終わると全く離れて行ってしまうということです。この状況について、私も何年も何年も考え続けているのですが、今日、この場で色々なヒントを貰った気がします。それが一つです。
「新たな文化風土の創造のために」
横浜のNPOクリエイティブクラスター理事長 岡田智博氏をゲストに招き、文化活動を通じて新たな都市風土の転換に成功した事例の紹介や、岡田氏自身がこれから取り組もうとしているモデルなどについてお話していただきました。後半は、東北大学大学院経済学研究科の大滝精一教授を交えて、フェスやビジネス・デザイン・センター構想をはじめとする、クリエイティブな都市のための様々な仕掛けを巡ってトークセッションを行われました。SESSION-01は仙台クリエイティブ・クラスター・コンソーシアムの「クリエイティブ・カフェ」の一環として実施いたしました。
第二部 トークセッション
岡田智博氏(NPO横浜クリエイティブ・クラスター)/大滝精一教授(東北大学経済学研究科地域イノベーション研究センター長)