東京でできないことを仙台でする。これが重要なことだと思う。

岡田:でも仙台は工業都市ではなくてあくまで商都ですので、このリンツのストーリーとは若干違うだろうなと思います。ただ商都でありながら、生み出すものがないところに問題があるわけです。生み出すものを少しでもいいから作っていく、いわゆる何か発注するにしても、特にクリエイティブなものを発注するにしても、東京に行かずに仙台に食い止めるようにする。人口流動の、特に大学生の流動の方向は仙台は東北にとってはやはり重要なわけです。山形のように豊かなところや、福島のように仙台より南にあるところの買い物客の流動性は郡山からは南へ、東京へ行くけれど、福島市からは北に上がっていくわけです。そういうことになった場合、山形と郡山以南以外の買い物客にとっては、仙台はやっぱり憧れの土地になるわけですよ。そうなると、こういう人たちに仙台のクリエティビティーがどうプロバイドするかといことになるわけです。

 例えば、東北最大の産業の一つである観光産業、それからいわゆる食品産業、まさにここにはデザインであったりとか、ものづくりであったりとか、クリエティビティーが必要になってきます。観光産業や食品産業が、何か変えていこう、リニューアルしようと言った時、東京の会社に頼むというより、仙台にいる人たちと一緒の方がコストが安くなるはずなんですよ、東北の人たちにとっては。コストが安くなるというのは皆さんの才能を悪く言っているわけではありません。ただ単に中抜きがなくなる。そして仙台の人たちの才能をもっと活動しやすくなるとしたら、もっとそこで活動できる人たちが増えるだけではなくて一人一人のクリエイターの単価も上がってくるわけで、最終的に東北全体の活性化につながるようになればいいと思うわけです。

 それから、助成金を頼るモデルではなくて自分たちの力で東北にある企業やものでやっていくことを決めた場合、しっかりパートナーシップを組んで売れるものを作っていく、そしてそれが仙台から物語を作っていくことによって仙台のお客さんがまず周りにやってきます。こういう本当の意味での地域の生態系を作っていくことが重要です。

 運がいいことに、仙台は市の面積が広大です。作並や秋保のような温泉も抱えて、港町もすぐ近くにあります。仙台のクリエイティブ産業と観光関連企業が仙台観光の物語を作ることによって、都市型の生活をそのまま続けていくことで快適な気分になりたいというわがままな東京の若者であったりとか、もしくは仙台の若者であったりとか、もしくは若者ではなく普通の人であったりとかを惹きつけるようになってくると思います。こういう形というのがまず出てくると思います。

 そこは映像ビジネスとは違うかもしれないけれど、印刷グラフィック、プロダクト、それに建築の分野っていうのは全部観光に引っかかりますよね。その点でクリエイティブの地産地消というのを推進させるというのが重要ではないかなというように思っているわけです。

 フェスティバルについては研究会ということで出てきているわけなんですけれども、いかにそのフェスティバルを赤字にしないかということがまず第一の命題になります。本当に仙台でエレクトロニカを新しい若者たちの文化としてのランドスケープとして作っていくと。ただしそれを本当にまだ日本では行われていないからということで、客が東京からも呼べる、全国から呼べるというような場合のフェスティバルづくりをどう設計して、それに対して、いわゆるどれだけ無駄にならないかということを作っていくということが重要なのかなと。ただ、そのエレクロトロニカといっても音楽だけにとどまらないで、例えばデジタルサイネージや新しいコンテンツ、放送通信融合インストラクチャーなどに合った形の表現形態というものを街中にどんどん増やしていくような形で実験的なことをすることで、世界中のクリエイティブの人たちが仙台をショーケースとして使うような形が一方であることで注目を集めることができるのではないかなと。

 東京でできないことを仙台でする。これが重要なことだと思います。それに対して何とか無駄銭をたくさん使わないで使った分だけに対してお客さんが来ることや、色々なものが跳ね返ってくることをどう作っていくかという制度設計をうまくすることがフェスティバルでは重要だと思います。