柿崎:挑戦や困難の克服のために、最新技術を使っていくということは、人間の本能なのかもしれないですね。それが人間の技術を進歩させてきたのは間違いないように思えます。
鹿野:それはあると思いますね。結局、生物が海から出る必要がないにも関わらず陸に上がったり、今や人間は宇宙に出て行ったりしていますよね。本能的に未知の領域を目指すのではないかと。もしかするとそれは、絶滅する可能性があるからだと僕は思うんですね。絶滅を逃れるために、体験していない領域に常に足を踏み入れていく。
技術的な挑戦というのは一種の身体の拡張だと思うんです。早く目的地に着くまでに、太古の時代は速く走る必要が会った。でも今はより早い乗り物に乗るようになりました。更には、目的地と直接通信する事が出来る。身体をどんどん世界に拡大しているわけです。
柿崎:身体の拡張の手段として次々と新しいテクノロジーが生み出され、未知の領域に挑戦していく過程で人間そのものも変化していくと。
鹿野:身体の拡張を伴った芸術表現の一つがメディア・アートなのだと思います。もしかすると身体というよりも意識の拡張と言った方が良いのかもしれません。新しい領域への道しるべのような。
柿崎:人間が新しい領域へ行くための希望を象徴し、比較から生まれる価値とは違う新しい価値観を提示することをベースにしたフェスを実現するとした場合、鹿野さんがイメージするフェスの姿というものがあればお伺いしたいのですが。
鹿野:やはり世代を越えた人々に受け入れられることが重要だと思います。子供や若い人に向けてのワークショップや何かしらその新しい価値観を共有できる機会を設けることが必要だと思います。瞬間的なその年だけのものにしないということを考えると、若い人に興味をむかせるということはとても重要だと思います。
柿崎:そうですね。フェスではワークショップやプレゼン、シンポジウムが連日行われているイメージを描いています。フェスを最新のテクノロジーと表現との出会い、学びの場、共感の場とできればと思っています。できればアーティストからのレクチャーを集中講義のような形で受講できたりするのもいいかもしれません。
鹿野:それから、最新技術を日常のライフスタイルに近づけるということも大事ですね。我々としてもストイックに緊張感のあるインスタレーションではなく、なるべく多くの人にメッセージが伝わるようにしたいと考えています。特にwowlabというチームで取り組む場合は、それがすごく重要です。作る人と見る人が一体になれるようなものがベストですね。
柿崎:あと一歩進めて、日常生活の質を高めるために鹿野さんが制作しているMotion Graphicsなどが普通に入って来る将来を考えたりしますか?